AV1(AOMedia Video 1)は、インターネット上での動画配信を目的として開発された、次世代の動画圧縮コーデックです。
従来のコーデックに比べて高い圧縮率を持ちながら、同等またはそれ以上の画質を維持できるため、データ使用量を削減し、より快適な動画視聴体験を提供することが期待されています。
AV1の特徴
AV1の特徴は、大きく2つです。
- オープンかつロイヤリティフリー: 非営利団体のAlliance for Open Mediaによって開発されており、特許料を気にすることなく誰でも自由に利用できます。これは、普及を促進する大きな要因となっています。
- 高い圧縮効率: 従来のコーデックであるH.264やH.265/HEVCに比べて、同じ画質であればデータ量を大幅に削減できます。これにより、低帯域幅環境でも高画質な動画を視聴したり、データ通信量を節約したりすることが可能です。
Google(YouTube)、Netflix、Amazon Prime Videoなど、主要な動画配信サービスやブラウザで採用が進んでいます。また、ハードウェアレベルでの対応も拡大しており、今後ますます普及していくと予想されます。
AV1の圧縮効率
AV1の圧縮効率は、H.264(MP4)と比較して一般的な傾向として
同じ画質の場合→AV1だと約30%〜50%程度ファイルサイズが小さくなる。
同じファイルサイズの場合→: AV1の方がH.264よりも高画質になる。
例えば、ある動画をH.264でエンコードしたところ1GBになったとします。同じ動画を同じ画質でAV1でエンコードした場合、理論上は0.5GB〜0.7GB程度になる可能性があります。
※あくまでも一例であり、実際の数値はエンコード設定やコーデック実装などによって変動します。
AV1の仕組み
AV1は、主にGoogleのVP9をベースに、Daala、Thor、VP10といった技術を組み合わせて開発されています。従来のブロックベースの周波数変換に加えて、新しい技術を取り入れることで、より効率的な圧縮を実現しています。
AV1の利点
- データ通信量の削減: モバイル環境などでデータ通信量を気にせずに高画質動画を楽しめます。
- 低帯域幅環境での高画質再生: インターネット回線速度が遅い環境でも、途切れにくく高画質な動画を視聴できます。
- ストレージ容量の節約: 動画ファイルのサイズが小さくなるため、デバイスのストレージ容量を有効活用できます。
AV1の欠点
エンコードに時間がかかる
高い圧縮率を実現するために、エンコード処理に多くの計算リソースが必要となり、時間がかかる傾向があります。
対応ハードウェアが少ない
まだすべてのデバイスでハードウェアデコードがサポートされているわけではありません。
現時点でAV1に対応しているハードウェアは以下の通りで、
NVIDIA
AV1エンコード | AV1デコード | |
GeForce RTX4000シリーズ | 〇 | 〇 |
GeForce RTX3000シリーズ | × | 〇 |
AMD
AV1エンコード | AV1デコード | |
Radeon RX7000シリーズ | 〇 | 〇 |
Radeon RX6000シリーズ | × | 〇 |
Intel
AV1エンコード | AV1デコード | |
Arcシリーズ | 〇 | 〇 |
第11世代Core(Tiger Lake)プロセッサ以降 | × | 〇 |
最新のGeForce RTX 4000シリーズ、Radeon RX 7000シリーズ、Intel Arcシリーズであれば、エンコード・デコードの両方に対応しているため、AV1の性能を最大限に活用できます。
GeForce RTX 3000シリーズ、Radeon RX 6000シリーズ、第11世代Intel Coreプロセッサ以降の内蔵GPUはデコードに対応しており、再生支援に役立ちます。
なお、MacはM3チップからAV1エンコード/デコードに対応しています。
まとめ
AV1は、今後の動画配信において重要な役割を果たすことが期待される、非常に有望なコーデックです。データ通信量の削減や高画質再生の実現に貢献し、私たちの動画視聴体験を大きく変える可能性を秘めています。