Windows 10には、様々なエディションが存在しますが、その中で「LTSB」という特殊なエディションをご存知でしょうか?
LTSBは、Long-Term Servicing Branchの略称で、2018年以降はLTSC (Long-Term Servicing Channel)に名称変更されました。
LTSBは、2015年7月29日にバージョン1507として初めてリリースされ、2016年8月2日にバージョン1607 (LTSB 2016) がリリースされました。
本記事では、Windows 10 LTSB/LTSCの特徴やメリット・デメリット、適用例などを詳しく解説し、通常のWindowsエディションとの違いを明らかにします。
Windows 10 LTSB/LTSCとは
Windows 10 LTSB/LTSCは、ミッションクリティカルなシステムなど、頻繁な機能更新による影響を受けたくない特殊な用途のデバイス向けに設計されたWindows 10 Enterpriseエディションの特殊なバージョンです。
通常のWindows 10は、半期ごとに機能更新が行われますが、LTSB/LTSCは2~3年ごとに新しいバージョンがリリースされます。
LTSB/LTSCと通常版のWindows 10の違い
LTSB/LTSCと通常版のWindows 10の主な違いは以下の点が挙げられます。
項目 | LTSB/LTSC | 通常版 |
---|---|---|
リリースサイクル | 2~3年ごと | 半年ごと |
機能更新 | 2~3年ごと | 半年ごと |
サポート期間 | 10年(メインストリームサポート5年、延長サポート5年) | 18ヶ月 |
更新プログラム | セキュリティ更新プログラムのみ | 機能更新とセキュリティ更新プログラム |
アプリケーション | ストアアプリは含まれない | ストアアプリを含む |
エディション | Enterpriseエディションのみ | Home、Pro、Education、Enterpriseなど |
LTSB/LTSCは、安定性と長期サポートを重視する一方、最新機能は利用できません。
サイドローディングなどを用いても、ストアアプリを含む最新機能をインストールすることはできません 。そのため、常に最新機能を利用したいユーザーには適していません。
LTSB/LTSCのメリット・デメリット
メリット
- 安定した動作: 頻繁な機能更新がないため、システムの安定性が向上します。
- 長期サポート: メインストリームサポートと延長サポートがそれぞれ5年間提供され、合計10年間のサポートが提供されるため、長期的な運用が可能です 。
- 管理の容易さ: 更新プログラムがセキュリティ更新プログラムのみのため、管理の手間が軽減されます。これは、IT部門の負担軽減にも繋がります 。
- 互換性の維持: 長期にわたり同じ環境を維持できるため、既存システムとの互換性を維持しやすくなります 。
デメリット
- 最新機能の利用不可: 最新の機能やアプリケーションは利用できません 。
- ハードウェアの互換性: 長期利用により、ハードウェアのサポートが終了する可能性があります 。この場合、ハードウェアの修理が必要になった際に、部品の在庫切れなどにより修理できないリスクや、新しいLTSB/LTSCバージョンにアップグレードできない可能性も出てきます。最悪の場合、マシンの買い替えが必要になるケースも考えられます。
- レガシーシステム化: 最新技術への対応が遅れ、レガシーシステム化のリスクがあります 。
LTSB/LTSCが適しているユースケース
LTSB/LTSCは、以下のようなユースケースに適しています。
- 産業用機器: 工場などの製造ラインで稼働する制御システムは、安定稼働が求められるため、LTSB/LTSCの長期サポートと安定性が有効です。
- 医療機器: 病院などで使用される医療機器の制御システムも、高い信頼性と安定性が求められるため、LTSB/LTSCが適しています。
- ATM: 金融機関のATMは、24時間365日安定して稼働する必要があるため、LTSB/LTSCの長期サポートと機能更新の少なさがメリットとなります。
- POSレジ: 小売店のPOSレジは、レジ業務の安定稼働が重要であり、LTSB/LTSCの安定した動作環境が求められます。
- デジタルサイネージ: 公共施設や商業施設に設置されるデジタルサイネージは、長期間にわたり同じコンテンツを表示し続けることが多く、LTSB/LTSCの安定性が役立ちます。
- IoTシステム: センサーやデバイスをネットワークで接続して制御するIoTシステムでは、システムの安定稼働が重要であり、LTSB/LTSCの長期サポートと機能更新の少なさがメリットとなります。
これらのユースケースでは、システムの安定稼働が最優先事項であり、頻繁な機能更新による影響を最小限に抑える必要があります。LTSB/LTSCは、このような要件を満たす最適なWindowsエディションと言えるでしょう。
LTSB/LTSCの入手方法とライセンス
LTSB/LTSCは、ボリュームライセンス契約を通じて入手できます 。ボリュームライセンスは、企業や組織が複数台のPCにWindowsを導入する場合に利用できるライセンス契約です。LTSB/LTSCは特殊なライセンスが必要となります 。LTSB/LTSCのライセンス費用は、契約内容によって異なります。
LTSB/LTSCに関するFAQ
LTSB/LTSCについて、よくある質問をまとめました。
Q. LTSB/LTSCは、通常のWindows 10と比べてパフォーマンスは劣りますか?
A. いいえ、LTSB/LTSCは、通常のWindows 10と比べてパフォーマンスが劣ることはありません。むしろ、機能更新がない分、システムリソースの消費が抑えられ、パフォーマンスが向上する可能性もあります。
Q. LTSB/LTSCでMicrosoft Edgeやストアアプリは利用できますか?
A. いいえ、LTSB/LTSCには、Microsoft Edge、Cortana、ストアアプリなどの機能は含まれていません 。ただし、Internet Explorer 11は利用可能です。
Q. LTSB/LTSCから通常のWindows 10にアップグレードできますか?
A. はい、LTSB/LTSCから通常のWindows 10 Enterpriseにアップグレードすることは可能です 。ただし、アップグレードには、Windows 10 Enterpriseのライセンスと再インストールが必要です。
結論
Windows 10 LTSB/LTSCは、安定性と長期サポートを重視するシステムに最適なWindowsエディションです。最新の機能やアプリケーションは利用できませんが、ミッションクリティカルなシステムや特殊な用途のデバイスにおいては、安定稼働を維持するために重要な選択肢となります。
LTSB/LTSCは、通常のWindows 10と比べて、機能更新の頻度が少なく、サポート期間が長いため、システムの安定稼働と長期的な運用に貢献します。一方で、最新機能の利用が制限されるというデメリットもあります。
LTSB/LTSCの導入を検討する際は、システム要件や運用方針、そして安定性と最新機能のどちらを優先するかを考慮し、適切な判断を行うようにしましょう。