Intel CPUを選ぶ際、「vPro」という言葉を目にしたことがある方もいるのではないでしょうか? vProは、ビジネスPC向けに設計されたIntelのプラットフォームで、セキュリティや管理性、パフォーマンス、安定性に優れた機能を提供します。
この記事では、vProとは何か、普通のCPUと何が違うのか、企業や組織にとってどのようなメリットがあるのかをわかりやすく解説します。
vProの概要
Intel vPro®プラットフォームは、最新のAIテクノロジーを搭載したビジネス向けのコンピューティング基盤です 1。 ハードウェアベースのセキュリティとリモート管理機能により、企業のIT資産を保護します。vProは、Intel Core iシリーズやXeonといったCPU、対応するチップセット、そしてIntel Management Engine (ME) というファームウェアで構成されています。vProブランドが登場した当初(2007年頃)は、Intel Active Management Technology (AMT) とほぼ同義でしたが、現在ではAMTを含むより広範なテクノロジーの集合体として認識されています 2。
vProプラットフォームは、PCのパフォーマンス、ハードウェアベースのセキュリティ、管理性、安定性を実現する機能を備えています。IT部門はvProの機能を使うことで、場所を問わずユーザーをより適切にサポートできます。
vProと普通のCPUの違い
vProと普通のCPUの最大の違いは、ビジネス用途に特化した機能が搭載されているかどうかです。vProは、企業のIT管理者がPCを効率的に管理・運用するために必要な機能をハードウェアレベルで提供します。
主な違いは以下の点が挙げられます。
- リモート管理機能: PCがスリープ状態や電源が入っているものの応答がない状態でも、ネットワーク経由でPCの診断、修復、BIOSの更新などを行うことができます 3。
- 高度なセキュリティ機能: ハードウェアレベルでのセキュリティ対策により、マルウェアや不正アクセスからPCを保護します 4。
- 安定性向上のための機能: OSの移行やアップデートをスムーズに行えるよう、安定性に優れたプラットフォームを提供します 5。
12世代目のIntel Coreプロセッサーでは、vPro Essentials、vPro Enterprise for Windows、vPro Enterprise for Chrome、vPro Evo Designという4つの異なるプラットフォームが導入されました 2。 vPro Essentialsは、アウトオブバンドKVMリモートコントロール、Wireless Intel® AMT、Fast Call for Help、Intel® Remote Secure Erase with Intel® SSD Proなど、一部の機能をサポートしていません。vPro EssentialsをサポートするIntelプロセッサーは、アウトオブバンド管理をサポートし、「Access Monitor」機能で監視できるIntel Standard Manageability (Intel AMTのサブセット) を使用しています。
CPUレベルでの違いとしては、PKI証明書の特別なメモリ領域への保管や、Trusted Executionへの対応などが挙げられます 6。Trusted Executionは、CPUがBIOS/EFI/OSブートローダーの設定を定義されたポリシーと照合し、環境の望ましくない変更(ウイルス、ブートローダーレベルのルートキット、サードパーティのブートマネージャー、リムーバブルメディアからの起動の試みなど)が発生した場合に、PC/サーバーの起動を早期段階でブロックする特別なメカニズムです。
vProのメリット
vProの機能を活用することで、企業や組織は以下のようなメリットを得られます。
- IT管理コストの削減: リモート管理機能により、IT担当者が各PCに直接アクセスする必要がなくなり、管理コストを削減できます 4。vProの導入により、ハードウェア関連のオンサイト訪問を最大90%削減できるため、コストを削減し、ITの生産性を向上させることができます 3。
- セキュリティリスクの低減: 高度なセキュリティ機能により、サイバー攻撃による被害を最小限に抑えられます 4。
- 従業員の生産性向上: 最新のAIテクノロジーを搭載したCPUにより、従業員の作業効率を向上させることができます 1。
- ダウンタイムの削減: リモートでのトラブルシューティングや修復により、システムのダウンタイムを最小限に抑えられます 3。vProベースのデバイスを使用すると、ハードウェア関連の問題を最大83%高速に解決できます 3。
- 安定したシステム運用: 安定性に優れたプラットフォームにより、長期にわたって安定したシステム運用が可能になります 1。
vProのデメリット・注意点
vProは多くのメリットを提供する一方で、以下のデメリット・注意点も存在します。
- コスト: vPro搭載PCは、通常のPCよりも高価になる傾向があります 8。
- セキュリティリスク: Intel AMTプラットフォームは、ハッカーの標的となる可能性があります 8。 2017年には、リモートの攻撃者がPCのAMTコンソールにアクセスしてデータを盗んだり、マルウェアをインストールしたりできる脆弱性が見つかりました 8。企業はセキュリティリスクに注意し、新たな問題が発生した場合はできるだけ早く対処する必要があります。
- 複雑な設定: vProの機能をフル活用するには、ある程度のIT知識と設定が必要です。
vPro搭載CPU
vProは、Intel Core i5、Core i7、Core i9、Xeonなど、幅広いCPUで利用できます 8。具体的なCPUのリストは、IntelのWebサイトで確認できます 11。
vPro対応モデルは、vPro対応BIOSを搭載して出荷されます。起動時に「Delete」キーを押してBIOSに入り、BIOSのバージョンを確認することで、vPro搭載モデルかどうかを確認できます 12。 また、vPro対応モデルには、vPro対応BIOSが搭載されており、「Intel TXT(LT) Support」と「AMT Configuration」が必須です。起動時に「Delete」キーを押してBIOSに入り、確認してください。非vProモデルでは、BIOSでこれらの設定を行うことはできません。
vPro CPUのスペック比較
vPro CPUと非vPro CPUのスペックを比較した表を以下に示します。
Feature | vPro CPU | Non-vPro CPU |
---|---|---|
Processor Name | Intel Core i7-13700E Processor | Intel Core i9-14900KS Processor |
Cores | 16 | 24 |
Max Turbo Frequency | 5.10 GHz | 6.20 GHz |
Cache | 30 MB Intel Smart Cache | 36 MB Intel Smart Cache |
Processor Graphics | Intel UHD Graphics 770 | Intel UHD Graphics 770 |
まとめ
Intel vProは、企業向けPCに特化したプラットフォームであり、リモート管理、セキュリティ強化、安定性向上など、多くのメリットを提供します。vProの導入により、IT管理コストの削減、セキュリティリスクの低減、従業員の生産性向上、ダウンタイムの削減、安定したシステム運用などが期待できます。 一方で、コストやセキュリティリスク、設定の複雑さといったデメリット・注意点も存在します。
vProの導入を検討する際は、これらのメリットとデメリットを比較検討し、自社のニーズに合致するかどうかを判断することが重要です。特に、以下のような企業にはvProが有効な選択肢となります。
- 多数のPCを管理する必要がある大規模な組織
- セキュリティ対策を重視する企業
- リモートワークを導入している企業
- IT担当者の負担を軽減したい企業
vProは、初期費用は高くなりますが、長期的な視点で見ると、運用コストの削減や従業員の生産性向上により、投資対効果(ROI)を高めることができます 3。 また、vProはセキュリティリスクも抱えていますが、最新の情報やセキュリティパッチを適用することで、リスクを最小限に抑えることができます 8。
vProの導入を検討する際は、IntelのWebサイトや販売代理店に問い合わせて、詳細な情報を入手することをお勧めします。