自作PCを組むことは家を建てることに似ています。
CPUやグラフィックボードといった主要パーツは、家の柱や壁のようなもの。
しかし、どんなに立派な柱や壁を使っても、家が電気なしでは機能しないように、PCには電源ユニットが不可欠です。
電源ユニット選びを誤ると、システムが不安定になったり、他のパーツの寿命が短くなることもあります。
この記事では、PCの心臓部とも言える電源ユニットの選び方について、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。
1.電源ユニットのサイズ(規格)の種類と選び方
大きく2つのサイズがあります。
- ATX電源: 一般的なタワー型PCケースに対応する規格。ほとんどのPCケースはこれです。
- SFX電源: 小型PCケースに対応する、コンパクトな規格です。
ほとんどの場合はATX電源で問題ありません。
SFX電源は、Mini-ITXなどの小型PCケースを使用する場合に選択することがありますが、自作PCで使うことはめったにありません。
PCケースとの互換性
電源ユニットを選ぶ際は、PCケースの対応サイズを確認することが重要です。
規格が合っていても、奥行きが長すぎてPCケースに収まらない場合があります。家の大きさに合った家具を選ぶように、PCケースに合ったサイズの電源ユニットを選びましょう。
2.電源ユニットの容量 (W数)
次は必要な電力量(容量)を決めます。
容量が不足すると、PCが起動しなかったり、動作が不安定になる可能性があります。
必要な容量は、搭載するPCパーツの消費電力によって異なります。
消費電力の目安
各パーツの消費電力の目安は以下の通りです。
パーツ | 消費電力の目安 |
---|---|
CPU | 65W~150W |
メモリ | 5W (1枚あたり) |
マザーボード | 30W |
NVMe SSD | 25W |
SATA SSD | 3W |
HDD | 24W |
ケースファン | 3W (1つあたり) |
光学ドライブ | 25W |
グラフィックボード | 75W~350W |
グラフィックボードの消費電力は、モデルによって大きく異なります。 ハイエンドモデルほど消費電力が大きくなります。
最新のゲームを快適にプレイしたい場合は、高性能なグラフィックボードが必要になりますが、その分消費電力も大きくなることを覚えておきましょう。
余裕を持った容量選び
算出容量に、さらに30%程度の余裕を持たせるのがおすすめです。
将来的にPCをアップグレードする場合や、パーツの劣化による消費電力増加にも対応できます。
電源ユニットは、負荷率が50%前後の時に最も効率的に動作します。
そのため、現在のPC構成に必要な容量ぴったりの電源ユニットを選ぶのではなく、余裕を持った容量の電源ユニットを選ぶことが重要です。
3. 80PLUS認証の種類と効率
80PLUS認証とは、電源ユニットの電力変換効率を評価する国際的な認証制度です。
認証レベルが高いほど、電力変換効率が高く、省エネ性に優れています。 家の断熱性能のようなものです。
グレード | 負荷率:20% | 負荷率:50% | 負荷率:100% |
---|---|---|---|
80 PLUS STANDARD | 80% | 80% | 80% |
80 PLUS BRONZE | 82% | 85% | 82% |
80 PLUS SILVER | 85% | 88% | 85% |
80 PLUS GOLD | 87% | 90% | 87% |
80 PLUS PLATINUM | 90% | 92% | 89% |
80 PLUS TITANIUM | 92% | 94% | 90% |
グレードが高いほど価格も高くなります。
私見ですが、こだわってもGoldまでで十分です。
なぜかというと
まず、電源ユニットは、無名の怪しいメーカーを選ばない限りそう簡単に壊れません。
こだわりたければGold以上ですが、PlatinumやTitaniumとなると価格が跳ね上がります。
Titaniumは安くても4万円、容量やブランドによっては10万円を軽く超えます。
これらは故障率が低く、電力効率のおかげで電気代が僅かに安くなるメリットはあるものの、正直価格とまったく見合いません。
したがって、実益と価格の釣り合いがとれているSilverかGoldがおすすめです。
※600W未満はそもそもGoldまでしか存在しないことが多いです
PlatinumやTitaniumは、その電源ユニットを一生使い続けるとか、24時間365日稼働前提のPCを組むなどの特殊な事情がなければ選ぶ必要はありません。
3.1 Cybenetics認証
80PLUS認証以外にも、Cybeneticsが開発したETA認証といった、より厳格な指標に基づいた認証制度もあります。
Cybenetics認証は、変換効率だけでなく、「力率」「5VSB変換効率」「待機電力」といった項目も評価対象に含めています。
そのため、80PLUS認証よりも包括的な電源ユニットの性能評価が可能となっています。
5. ケーブルの種類(コネクタ)と必要な本数
電源ユニットには、様々な種類のケーブル(コネクタ)が付属しています。これらのケーブルは、家の中の配線のようなもので、各部屋に電気を送る役割を果たします。主なケーブルの種類と用途は以下の通りです。
- 24ピン メイン電源コネクタ: マザーボードへの電力供給。
- 8ピン/4+4ピン CPU補助電源コネクタ: CPUへの電力供給。
- 6+2ピン PCI Express電源コネクタ: グラフィックボードへの電力供給。
- SATA電源コネクタ: HDDやSSDなどのストレージへの電力供給。
- ペリフェラル電源コネクタ: ケースファンや光学ドライブへの電力供給。
必要なケーブルの本数は、搭載するパーツ構成によって異なります。
グラフィックボードを搭載する場合は、PCI Express電源コネクタが複数必要になります。
6. 電源ユニットの価格帯とメーカーの特徴
電源ユニットの価格帯は、容量や認証レベル、メーカーによって異なります。
- 500W: 5,000円~10,000円程度
- 600W~800W: 5,000円~15,000円程度
- 800W以上: 15,000円~
主なメーカーとしては、Corsair、Seasonic、玄人志向、Thermaltakeなどがあります。
- Corsair: 高品質で信頼性の高い製品を多くラインナップしています。
- Seasonic: 高価。信頼性はピカイチ。
- 玄人志向: 安い。かといって壊れやすいわけでもなくコスパ重視の場合よく選ばれる
- Thermaltake: 安い。デザインがいい。
7. その他、電源ユニットを選ぶ際に注意すべき点
静音性
電源ユニットには冷却ファンが搭載されており、動作音が発生します。静音性を重視する場合は、12cmファンを搭載したモデルや、ファンレス設計のモデルを選びましょう。
保護回路
電源ユニットには、過電圧保護、過電流保護、ショート回路保護などの保護回路が搭載されています。 これらの保護回路は、PCパーツを故障から守るために重要な役割を果たします。
ケーブルの取り回し
電源ユニットのケーブルは、PCケース内で取り回す必要があります。ケーブルが長すぎると、エアフローを阻害したり、見た目が悪くなる可能性があります。
モジュラー式の電源ユニットであれば、必要なケーブルだけを接続できるため、PCケース内をスッキリと整理 できます。
コンデンサの耐熱温度
PCを長く使うなら、105℃の電解コンデンサを採用したPC電源ユニットを選びましょう。 電解コンデンサは、電圧を一定に保ったりノイズを取り除いたりと重要な役割を持つパーツです。105℃の製品のほうが寿命が約50,000時間と長い傾向があります。
8. 具体的な電源ユニットの製品例
製品名 | 容量 | 80PLUS認証 | 規格 | 価格帯 | 特徴 |
---|---|---|---|---|---|
Corsair RM750e CP-9020262-JP | 750W | GOLD | ATX | 15,000円~20,000円 | 静音性に優れたファンを搭載 |
玄人志向 KRPW-BK650W/85+ | 650W | BRONZE | ATX | 5,000円~10,000円 | コストパフォーマンスに優れる |
DEEPCOOL PQ750M R-PQ750M-FA0B-JP | 750W | GOLD | ATX | 10,000円~15,000円 | フルモジュラー式 |
9. まとめ
PC電源ユニットは、PCの安定動作、性能、そして寿命に大きく関わります。適切な電源ユニットを選ぶことは、快適なPC環境を構築するための第一歩と言えるでしょう。
この記事で紹介したポイントを参考に、自分にぴったりの電源ユニットを選び、快適なPCライフを送りましょう!
容量、効率、サイズ、ケーブルの種類 - これらの要素を念頭に置き、PCケースとの互換性や静音性、保護回路、コンデンサの耐熱温度なども考慮することで、最適な電源ユニットを選ぶことができます。