HDDの書き込み方式とは?CMRとSMRの2種類
HDDの中には、円盤状のプラッタと呼ばれる金属製のディスクが入っています。HDDは、プラッタに磁気ヘッドの磁気の力を利用して情報を書き込み、必要な時にプラッタからデータを読み込みます。
データの読み書きの際には、磁気ヘッドが指定された位置まで移動します。磁気ヘッドの移動には制限があることから、プラッタを高速回転させてプラッタ全域にデータを書き込みできるようにします。このようにHDDは物理的に駆動する部分が多いため、衝撃に弱く、故障もしやすいと言われています。
HDDの書き込み方式には、SMR(Shingled Magnetic Recording)とCMR(Conventional Magnetic Recording)の2種類があります。それぞれの書き込み方式は全く異なる仕組みです。
ここでは、それぞれの書き込み方式の特徴を見ていきましょう。
CMR(従来型磁気記録)の特徴
CMRとは、従来からあるデータの記憶方式で、SMRよりも古い方式です。少し前までのHDDは、ほとんどCMRの書き込み方式を採用していました。
HDDは円を描くようにデータを記録します。この円のことをトラックと呼び、間隔が狭くなるほど記録密度が上がります。CMRでは、データを記録するトラック同士が隣接しており、お互い干渉しないようにガードバンドと呼ばれるすき間が設けてあり、非常にシンプルな構造をしています。
CMRでは、特定の場所のデータのみを書き換えできるため、データの上書きが簡単です。またCMRでは、データの部分的な書き換えではキャッシュメモリを使用しないため、データ書き換えによる速度低下も起こりません。
SMR(瓦磁気記録方式)の特徴
SMRは、2014年にシーゲイト社が開発した最新のデータ書き込み方式で、トラックの一部を重ねてデータを書き込むことから瓦磁気記録方式とも呼ばれます。
SMRは、CMRにあったガードバンドをなくし、トラックの一部を重ねることで記憶密度が上昇し、データ容量が約25%大きくなりました。つまり、CMRと同じ部品を使っているにもかかわらず、記録密度が上昇しており、製造コストは変わらず大容量のデータを保存できるためコスパが良いことがメリットです。SMRが開発されて以降、HDDの容量は一気に増大し、TBなどの超大容量の外付けHDDなども開発されています。
SMRは、瓦のようにデータが重なり記録されているため、特定の場所にあるデータだけを書き換えると隣接するデータまで影響してしまいます。そのため、データを書き換える場合は、そのデータ以降を全て書き換える必要があります。SMRで部分的にデータを書き込む場合は、ブロックを一時的にキャッシュメモリに保存してキャッシュメモリ内で必要なブロックを書き換えてから再度ブロックを書き込みます。
ただし、大量のランダムライトを行うと、キャッシュメモリがなくなり、急激に速度低下が起こります。CMRに比べ複雑な構造をしているSMRは信頼性も低く、大量のランダムライトが発生するNAS用のHDDには向いていないとも言われています。
HDDのCMRとSMRはどっちを選べばいい?
HDDのデータ書き込み方式、CMRとSMRは、結局どちらを選べばいいのでしょうか。
CMRのメリット・デメリット、耐久性等を比較し、どちらを選ぶべきかを解説します。
CMRとSMRのメリットとデメリット
まずは、CMRとSMRのメリット・デメリットを一覧表にまとめました。
メリット | デメリット | |
CMR | ・特定のデータのみを上書きできる ・さまざまな用途で使用できる | ・SMRよりも高価 ・SMRが主流になりつつある |
SMR | ・容量が大きく、コスパがいい ・消費電力が低い | ・特定のデータのみの書き換えができない ・ランダムライトに弱い ・頻繁なデータの書き換えで速度が落ちることがある |
CMRとSMRの耐久性の違い
SMRは、特定のデータだけを書き換えることはできないため、データ書き換えの際には頻繁にデータにアクセスすることになります。そのため、CMR方式のHDDよりもSMR方式のHDDの方が寿命も短い傾向があります。
CMRとSMRはどちらを選ぶべき?
SMRは容量が大きく、コスパがいいメリットがありますが、汎用性が低く、頻繁にデータの書き換えを行う場合は不向きです。とはいえ、速度低下はメディアキャッシュを使い切った場合に起こるため、一般的な用途で性能低下が起こることは少ないでしょう。そのため、コストをかけず大容量のHDDが欲しい場合は、SMR方式のHDDを検討しましょう。
ただし、NASなど頻繁にランダムライトを行う場合は、速度低下を避けるためにもCMR方式のHDDを検討するのもいいでしょう。
近年SMR方式の大容量のHDDは、ユーザーからの人気があることも事実です。そのため、製造メーカーもランダムライトにおける速度低下に対する対策を行っています。今後は、CMRとSMRのランダムライトにおける性能差も少なくなり、SMR方式が主流となっていくと考えられています。
速度を求めるならSSD
データ容量よりもデータ処理速度にこだわる場合は、HDDよりもSSDがおすすめです。SSDは、半導体メモリにデータを記憶する装置で、物理的に磁気ヘッドが動いてデータを記録するHDDと比べると、データ処理速度が速いことが特徴です。
しかし、データ保存容量は圧倒的にHDDが大きく、容量に対する単価も安いため、なるべく安く大量のデータを保存したい場合はHDDがおすすめです。
HDDとSSDとの違いや選び方等は、下記記事でも詳しく紹介しています。
HDDのCMRとSMRの見分け方は難しい!公式サイトで確認を
HDDには、パッケージや本体に書き込み方式の記載がないことも多く、購入するHDDがCMRかSMRかを見分けることは難しいでしょう。また、使用しているパソコンに搭載しているHDDがCMRかSMRかを簡単に見分ける方法もありません。
ただし、HDD各メーカーでは、公式サイトで書き込み方式について記載されています。そのため、HDDの型番がわかれば書き込み方式もわかる可能性があります。特に、Western DigitalのHDDの場合は、同じ製品でも型番によって書き込み方式が異なる場合があるためよく確認することが必要です。
下記公式サイトの製品ページで型番から、書き込み方式を確認しましょう。
HDDメーカー | 公式サイト |
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Western Digital | ハードディスクドライブ(HDD) |
Seagate | ドライブに搭載されている技術 |
東芝デバイス&ストレージ | ストレージプロダクツ(HDD) |