Bluetoothは、今や私たちの生活に欠かせない近距離無線通信技術で、スマートフォン、パソコン、イヤホン、スピーカーなど、様々なデバイスで利用されています。
しかし、実はBluetoothには多くのバージョンが存在し、それぞれに特徴や機能が異なります。
この記事では、Bluetoothのバージョンによる違いを分かりやすく解説していきます。
Bluetoothのバージョンとリリース時期
Bluetoothのバージョンは、1.0から始まり、現在では5.4まで進化しています。
各バージョンアップを重ねるごとに、新しい機能の追加や性能向上が図られてきました。
バージョン | リリース時期 | 特徴 |
---|---|---|
1.0 | 1999年 | 通信速度は最大1Mbps 多くの問題があった |
1.1 | 2001年 | 1.0の問題点を改善し、安定性を向上 |
1.2 | 2003年 | 2.4GHz無線LANとの干渉対策を強化 |
2.0 + EDR | 2004年 | データ転送速度が最大3Mbpsに向上 |
2.1 + EDR | 2007年 | ペアリングの簡略化 NFCへの対応 省電力化 Sniff Subrating機能によりマウスやキーボードなどのバッテリー寿命が最大5倍に延長 |
3.0 + HS | 2009年 | HS (High Speed) により、最大24Mbpsの高速データ転送が可能に Bluetooth 3.0 + HS対応機器が、高速データ転送が必要な場合に、Wi-Fiを使って通信を行うことで実現 省電力性向上 |
4.0 | 2010年 | BLE(Bluetooth Low Energy)が導入され、大幅な低消費電力化を実現 ウェアラブルデバイスやIoT機器の普及を促進 |
4.1 | 2013年 | 省電力機能がさらに向上 |
4.2 | 2014年 | セキュリティ強化とデータ転送速度の高速化 |
5.0 | 2016年 | 4.0と比較して データ転送速度が約2倍、 通信範囲が約4倍に拡大、 通信容量が8倍に増加 |
5.1 | 2019年 | 方向探知機能が追加され、位置情報サービスの精度が向上 Bluetoothデバイスが信号の送信方向を特定できるようになった |
5.2 | 2020年 | LE Audio規格が追加され、高音質・低遅延のオーディオ伝送が可能に |
5.3 | 2021年 | 接続の安定性向上 干渉回避機能の強化 消費電力の削減 |
5.4 | 2023年 | 双方向通信対応 暗号化広告データ機能の追加 |
6.0 | 2025年? |
基本的には、新しいバージョンのBluetoothは、古いバージョンのBluetoothとの下位互換性があります。
したがって、Bluetooth 5.0対応のスマートフォンは、Bluetooth 4.0対応のイヤホンと接続することができます。
ただし、バージョンが異なる場合は、機能が低い方のバージョンに制限されます。
例えば、Bluetooth 5.0の高速データ転送は、Bluetooth 4.0のイヤホンでは利用できません。
自作したデスクトップパソコンでBluetoothを利用するには、別途レシーバーが必要です。
Bluetooth6.0の新機能とリリース時期
Bluetooth 6.0は、Bluetooth 5.x系からのメジャーアップデートであり、距離測定の精度向上、接続の安定化、低消費電力化といった様々な改良点 が盛り込まれています。位置情報サービスをサポートする画期的な新機能も追加され、Bluetoothの機能セットは引き続き標準的に拡張され、相互運用性と安全なパフォーマンスを備えたより多くのユースケースが実現します。
Bluetooth 6.0 の最も注目すべき機能の一つに Channel Sounding の追加があります。 これにより、2 つの Bluetooth LE デバイス間で双方向レンジングが可能になり、距離測定の精度と範囲に革命をもたらします。 Channel Sounding では、発信信号と受信信号の位相差を利用して、2つのデバイス間の距離を計算します。 この技術は、従来の Received Signal Strength Indicator (RSSI) を用いた測距方法よりも精度が高く、環境要因による影響を受けにくいという利点があります。 また、Channel Sounding は、Bluetooth 5.1 で導入された Angle of Arrival (AoA) や Angle of Departure (AoD) といった方向検出技術と組み合わせることで、屋内測位などのアプリケーションにも応用できます。 これにより、方向検出と距離推定を組み合わせることで、ユーザーエクスペリエンスを向上させることができます。
リリース時期
Bluetooth 6.0のコア仕様は、2024年9月3日にBluetooth SIG(Special Interest Group)によってリリースされました。
あくまでコア仕様であり、実用化は早くても2025年と言われています。
Bluetooth 5.x からの主な変更点
Bluetooth 6.0では、Bluetooth 5.xと比べて、以下の点が変更されています。
- Bluetooth Channel Sounding: 2つのBluetooth LEデバイス間の双方向レンジングを可能にすることで、距離測定の精度と範囲を向上させます。
- 意思決定に基づく広告フィルタリング: データパケットのスキャンに費やす時間を削減することで、Bluetoothデバイスのスキャン効率を向上させます。
- 監視広告主: ホストコントローラ・インターフェイス(HCI)を使用して、デバイスがいつ範囲内または範囲外に移動するかを追跡します。
- ISOAL(アイソクロナスアダプテーションレイヤー)の強化: データを小さなパケットに分割して送信する際の遅延を削減し、リアルタイム通信の信頼性を向上させます。
- LL(リンクレイヤー)拡張機能セット: デバイスがサポートする機能に関する情報をより多く交換できるようになり、Bluetooth通信の多用途性を高めます。
- フレームスペースの更新: パケットの送信間隔を柔軟に変更できるようになり、データの送受信を効率化します。
Bluetoothのクラスとは
Bluetoothには、通信距離によって3つのクラスがあります。
- Class 1: 最大100m
- Class 2: 最大10m
- Class 3: 最大1m
同じバージョンでも、クラスが異なると通信距離が異なります。デバイスを選ぶ際には、クラスにも注意しましょう。
Bluetoothのプロファイル
Bluetoothのプロファイルとは、Bluetoothデバイスがどのような機能を持っているかを定義したものです。
例えば、A2DPは高音質オーディオ伝送、HIDはキーボードやマウスなどのヒューマンインターフェースデバイス、HFPはハンズフリー通話などのプロファイルを定義しています。
デバイス同士が通信するためには、同じプロファイルに対応している必要があります。 デバイスを選ぶ際には、必要なプロファイルに対応しているかを確認しましょう。
各バージョンに対応するデバイスの例
Bluetoothバージョン | デバイスの例 | アプリケーション |
---|---|---|
1.x | 携帯電話、ヘッドセット | 音声通話、データ転送 |
2.x | パソコン、プリンター、ヘッドセット | データ転送、音声通話、ファイル転送 |
3.0 + HS | キーボード、マウス | 高速データ転送 |
4.x | スマートウォッチ、フィットネストラッカー、スマート家電、センサー | 低消費電力通信、データ収集 |
5.x | スマートフォン、ワイヤレスイヤホン、スマートスピーカー | 高速データ転送、高音質オーディオ伝送、位置情報サービス |
まとめ
Bluetoothは、今後も進化を続けると予想されます。
特に、IoT (Internet of Things) の普及に伴い、Bluetooth Low Energy (BLE) の重要性が高まっています。
BLEは、低消費電力、低コスト、小型・軽量といった特徴から、様々なIoT機器に搭載され、センサーデータの収集やスマート家電の制御など、幅広い用途で利用されています。
位置情報サービスの精度向上や、オーディオ伝送の高音質化なども、今後のBluetoothの進化において重要な要素となるでしょう。