SSDの大容量低価格化に伴いやや影の薄くなってしまったHDDですが、データ保管庫としてはまだまだ需要があります。
個人で使っているパソコンを譲ったり売りに出したりする際は、HDDのデータ消去が欠かせませんが
単にファイルを削除したり、フォーマットするだけでは、データ復旧ソフトであっさり復元できてしまいます。
今回は、より確実にデータを消去するための方法を、重要度が高い順に解説します。
1. 物理破壊
最も確実な方法は、物理的にHDDを破壊することです。データ復旧は不可能になりますが、HDD自体も使用できなくなります。
- ハンマーなどで叩き壊す: 記録媒体であるプラッタ(円盤状の部品)が物理的に破損するように、複数箇所を叩きます。
- ドリルで穴を開ける: プラッタに複数個穴を開けます。
- 物理破壊サービスを利用する: 専門業者に依頼すれば、プレス機などで確実に破壊してくれます。
2. 磁気消去
強力な磁気をHDDに照射することで、データを消去する方法です。専門の機器が必要となりますが、短時間で確実に消去できます。
- 磁気消去装置を使用する: データ消去サービス業者や、情報機器を取り扱う企業などが所有しています。個人での入手は難しいです。
3. データ消去ソフトウェアを使用する
ソフトウェアを使用してデータを完全に消去する方法です。物理破壊に比べると手間は少ないですが、消去に時間がかかる場合があります。
- 上書き方式: 乱数などの無意味なデータを複数回上書きすることで、元のデータを復元できないようにします。データ消去ソフトには、上書き回数や方式(DoD方式、Gutmann方式など)が異なるものがあります。上書き回数が多いほど、消去に時間がかかりますが、より確実にデータを消去できます。
- Windowsの機能を使用する: Windows 8以降には、HDDを初期化する際に「ドライブのクリーニングを実行する」というオプションがあります。これを選択することで、簡易的なデータ消去が行われます。ただし、専用の消去ソフトに比べると確実性は劣ります。
- データ消去ソフトを利用する: 市販またはフリーのデータ消去ソフトを利用するのが一般的です。代表的なソフトには以下のようなものがあります。
- DBAN (Darik's Boot and Nuke): フリーのデータ消去ソフトウェア。ブート可能なCD/USBを作成して使用します。
- Eraser: フリーのデータ消去ソフトウェア。Windows上で動作します。
- CCleaner: フリーのシステムクリーナーソフトですが、データ消去機能も搭載しています。
4. フォーマット (クイックフォーマットは不十分)
通常のフォーマット(クイックフォーマット)では、データは実際には消去されておらず、ファイルシステム上の管理情報が初期化されるだけです。そのため、データ復旧ソフトで簡単に復元できます。
- 通常フォーマット (フルフォーマット): Windowsのフォーマットオプションで「クイックフォーマット」のチェックを外して実行すると、HDD全体をスキャンして不良セクタをチェックし、データを上書きするため、クイックフォーマットよりは復元されにくいですが、データ消去ソフトに比べると不十分です。
どの方法を選ぶべきか?
まとめです。
- 機密情報や個人情報など、絶対に漏洩させたくないデータの場合: 物理破壊または磁気消去が最も確実です。
- 通常のデータで、ある程度確実に消去したい場合: データ消去ソフトウェアを使用するのがおすすめです。
- 手軽にデータを消去したい場合: Windowsの機能を利用するか、通常フォーマットを行う方法もありますが、データ復旧のリスクがあることを理解しておきましょう。
注意点
- SSDの場合: SSDはHDDとはデータの記録方式が異なるため、HDD向けのデータ消去ソフトウェアでは十分に消去できない場合があります。SSDメーカーが提供する専用の消去ツールを使用するか、物理破壊を行うことを推奨します。
- データ復旧サービス: データ消去を行った後でも、専門業者に依頼すればデータ復旧を試みられる可能性があります。絶対に復元されたくない場合は、物理破壊が最も確実です。